こんにちは。星野みなみです。

質問箱に要望が来たので、アリーナス条項("Gilbert Arenas" provision)を解説してみようと思います。


アリーナス条項、名前だけ聞いたことある方は多いと思いますが、僕のように内容まで理解している方は少ないのではないでしょうか。

それも無理はありません。
サラリーキャップという概念やラリーバード例外条項など、基本的なことを理解していてもアリーナス条項の内容はかなり複雑なので難しいです。


CBA様の当該部分を全文訳してみたので、長いですけどとりあえず読んでみてください。





43. ギルバート・アリーナス条項とは?

2005年以前は制限付きFAに対して、元所属チームではマッチできないオファーを他チームが出すことが可能な状況があった。

契約が切れる選手のバード権がアーリーバードかノンバードでしかなく、アーリーバード例外条項あるいはノンバード例外条項で定められた範囲の額より大きな額のオファーを出され、それにマッチできるキャップスペースがない場合に起こった

ギルバート・アリーナスは2001年にゴールデンステイト・ウォリアーズに2巡目で指名され2年契約を結び、2003年にはアーリーバード権を持つFAになった。

その時のウォリアーズにはキャップスペースがなく、初年度サラリーがアーリーバード例外条項の規定の額(当時約4.9M)までのオファーにしかマッチすることができなかった。

そこでワシントン・ウィザーズは、アリーナスに初年度サラリーが約8.5Mのオファーを出した。キャップスペースのなかったウォリアーズはマッチできなかった。


このルールの穴は2005年のCBA改正でほぼ解消された(現在も完全には解消されたとはいえない (後述)  (1))

現在では、リーグ在籍1〜2年目の制限付きFAにオファーすることができるサラリーに制限がかかるようになっている。初年度サラリーがフルミドル例外条項の額を超えるようなオファーは出すことができない

そうすると、選手の元所属チームはアーリーバード例外条項(2年目の選手の場合)またはフルミドル例外条項(枠があれば)を使用してオファーにマッチすることができる。

この場合2年目のサラリーは、通常通り1年目のサラリー+5%の昇給を設定できる。

3年目のサラリーは、2年目から大きく上昇する場合がある。

4年目のサラリーは、3年目のサラリーの最大4.5%まで増加(または減少)する可能性がある。


最初の2年でオファー可能な最大のサラリー(1年目にフルミドル例外条項の満額→2年目に5%昇給)で、全保証かつ、ボーナスが含まれていない場合、2年目→3年目の大幅なサラリーの上昇を組み込むことができる。

2年目→3年目の昇給が通常の昇給率(1年目のサラリーの5%)を超える場合は、さらに制限がある。この場合オファーする側の1年目のチームサラリーに計上される額は1年目のサラリーではなく、契約全体の平均サラリーになる。

つまり、キャップスペースが8Mのチームは、3年24Mあるいは4年32Mのオファーまでしか出せない。

2年目→3年目の昇級率が1年目→2年目の昇給率(+5%)以下の場合、1年目のサラリーがオファーを出すチームサラリーキャップ以下であればアリーナス条項は適用されない。


例えば、2017-18シーズンのキャップスペースが12Mのチームが4年契約のオファーを出し、2〜3年目の大幅な昇給を組み込みたい場合、4年48Mの契約が提示できる。

1年目のサラリーは、フルミドル例外条項の満額の8.406Mに制限される。2年目のサラリーは8.8263M(1年目のサラリーの5%の昇給)となる。これにより、3年目→4年目は4.5%の昇給で、3〜4年目に残りの30.768Mが分配されることになる。まとめると契約全体は次のようになる。

契約年度サラリーメモ
18.406M2017-18シーズンのフルミドル例外条項の満額
28.8263M 1年目のサラリーの5%の昇給
315.04533M30.7677Mを、3年目→4年目で4.5%昇給するように分割しそれぞれ額を設定する(3)
415.72237M3年目のサラリーから4.5%の昇給
48M平均すると12Mなので、この内容ならオファー可能

このオファーを出す側のチームには、1年ごとにそれぞれ12M(契約の平均サラリー)がチームサラリーに計上される。

選手の前所属チームがオファーにマッチしてプレーヤーを残留させる場合は、上記の表のようなサラリーと平均サラリーのどちらをチームサラリーに計上させるかを選択できる(4)

マッチするチームはオファーにマッチするために、使用可能な例外条項(フルミドル例外条項やアーリーバード例外条項など)を使用することができる。

3年目の大幅な昇給を組み込むには、オファーするチームは契約全体の平均サラリーをサラリーキャップ以下に抑える必要があるため、フルミドル例外条項の満額を上回るキャップスペースが必要である。

たとえばフルミドル例外条項の満額が10Mで、チームが4年間のオファーを出したいとする。そのチームが5%を超える3年目の昇給を組み込む場合、そのチームに計上されるサラリーは契約全体の平均サラリーによって決定される。 

標準の5%の昇給率で10Mから始まる4年間のオファーは合計43Mになるため、つまりはこの額を超えてオファーしない限り、アリーナス条項は無効になる。そのためこの例の場合では、アリーナス条項を適用させるためにはキャップスペースが10.75M以上が必要になる。

前述したように、ルールの穴は解消されたが、完全には解消されなかった。

アリーナス条項は、2年後にアーリーバード権を持つFAになる、2巡目指名選手やドラフト外選手を失うことからチームを守ることを目的としている。それでもチームがオファーシートにマッチできない場合がいくつかある。

  • FAになる選手のバード権がノンバードかつチームにはミニミドル例外条項しか持たない時に、ミニミドル例外条項の満額より大きな額あるいは4年契約のオファーを出された場合。
  • FAになる選手のバード権がノンバードかつチームがすでに他のプレイヤーと契約するためにフルミドル例外条項の枠を使用した場合。
  • リーグ在籍3年の選手がFAになり、その選手のバード権がノンバードまたはアーリーバードである場合(アリーナス条項はリーグ在籍1年または2年のプレーヤーにのみ適用される)。
  • チームにリーグ在籍2年のFA2人いる場合。1人はフルミドル例外条項使用して再契約をすることができるが、もう1人は失うことになる。

(1)もちろんチームはキャップルームを使用してマッチすることもできる。
(2)2年目→3年目でサラリーが大幅に上昇する契約を組み込むのに十分なキャップスペースがチームにあるかどうかを判断するために、元所属チームはキャップスペースをオファー全体の平均サラリーと比較する。
(3)具体的にどのような額になるか確かめるなら、(4R - 2.05E)/ 2.045という式に当てはめる。
Rは契約全体の平均サラリーであるので、4年間の契約全体で4Rが支払われる。
Eは、フルミドル例外条項の満額で、オファーするチームが1年目のサラリーとして出せる最高額である。2年目は5%昇給し、最初の2年のサラリーはE + 1.05E、つまり2.05Eを占める。
最後の2年は合計4R - 2.05Eで、3年目から4年目までは4.5%の昇給となる。(3年目の額をYとすると)Y+ 1.045 = 2.045Y、2.045Y = 4R ー 2.05Eなので3年目の額は(4R - 2.05E)/ 2.045となる。
(4)マッチするチームは、オファーにマッチする時点で、チームサラリー(マッチする契約の平均サラリーを含めて)がサラリーキャップ以下の場合にのみチームサラリーに平均サラリーを計上させることができる。
アリーナス条項が適用され契約した選手が後でトレードされる場合、トレード先のチームサラリーにはその選手と契約した時と同じ額が計上される。
つまり、その選手がオファーを出したチームに行き、そのチームが後でその選手をトレードする場合、平均サラリーがトレード先のチームサラリーに計上される。
その選手の元所属チームがオファーにマッチし残留させ、その後トレードした場合はマッチした額のサラリーがトレード先のチームに計上される。





どうですか、分かりましたか?

まあ分からないと思うので、疑問が生まれそうなポイントをQ&A方式で解説していきます。


Q.制限付きFAってなに?

A.ざっくり言えば、他チームが出したオファーに対象選手がサインした時、元チームがその選手を残留させたければその契約内容で強制的に残留させられるFAのことです。


Q.制限付きFAにはどうすればなれるの?

A.ルーキースケール契約を4年満了した1巡目指名選手、NBA在籍3年以下となる契約を満了した1巡目指名以外の選手、レギュラーシーズンにNBAチームに15日間帯同した2way契約の選手に、元所属チームがクオリファイイングオファーという1年契約を提示した時になります。


Q.なぜ2巡目の選手なの?

A.1巡目の選手にはルーキースケール契約という専用の4年契約があり、これを満了することでのみ制限付きFAになるからです。


Q.なぜリーグ在籍2年以下の選手が対象なの?

A.リーグ在籍2年以下の選手は、3年以上の契約を満了することが条件のラリーバード権(バード権については過去のブログを)を持つことができません。するとキャップスペースのないチームはアーリーバード権の適用範囲である、リーグ平均サラリーより大きい額を出されるとマッチできないという状況が生まれてしまうからです。
 

Q.じゃあ2巡目ルーキーやドラフト外選手はみんな3年か4年契約すればいいじゃん?

A.その2巡目ルーキーやドラフト外選手と契約する際にキャップスペースがあるなりフルミドル、ミニミドルの枠があるなりすれば3年以上の契約ができますが、それ以外(ルームMLE、BAE、ミニマム)しかなければ2年契約までしかできません。


Q.なぜフルミドル例外条項の満額までなの?

A.フルミドル例外条項の満額は、アーリーバード例外条項の、"前シーズンの平均サラリーの105%"に近い額だからだと思います。もしフルミドル例外条項の満額がアーリーバード例外条項の前述の規定のサラリーより大きいシーズンでも、アリーナス条項の場合はアーリーバード権を使ってマッチできるらしいです。


Q.そもそもフルミドル例外条項ってなに?  

A.か、過去のブログをだな…(震え声)


Q.なぜ2→3年目で大幅な上昇をする時3→4年目の昇給率が4.5%なの?

A.ごめんそれは僕もよくわからない。細かいことを気にしたら負け。ペリカンズの指名権は1位。


Q.uincy?

A.cy.



ルールの内容としては複雑ですが、簡単に言えばせっかく2巡目なりドラフト外で当たり引いたのにすぐ出さなきゃいけないのは辛くない?という悩みを解決するためのルールということです。


こんな記事を書いといてアレですが、アリーナス条項が適用されるような選手はなかなか現れません。2巡目ルーキーやドラフト外の選手で、たった2年で分かりやすい結果を残して他チームに大規模なオファーを出されるという状況はそう多くはありません。  


今オフの主な対照者
・Khem Birch    
・Jordan Bell
・Maxi Kleber
・Thomas Bryant
・Patrick McCaw
・Quinn Cook
・Danuel House
など

という顔ぶれであり、今オフはおそらく使用されることはないでしょう。



ちなみに、タイラー・ジョンソンのサラリーがやたら高いのは現在アリーナス条項が適用された契約の3年目だからです。5.5M→6M→19M→19Mのような内容でした。
オファーを出したのはネッツです。ネッツ砲恐るべし…もしヒートがマッチしなかったらネッツにはその平均の12.5Mが毎シーズン計上されるだけでした。

 
アリーナス条項は見ての通りかなり歪な内容の制度で、賛否両論があります。タイラー・ジョンソンのようにマッチしたらしたでその高さに苦しむし、オファーする側は平均で考えればよいので明らかに負担が少ないですよね。 

今回は以上です。お疲れ様でした。